内懐の

知ってほしいと思いながら、知られたくないと思っている…

【DA】ダイヤルアゲインと旧約聖書

2017年3月2日から10月19日までcomicoで連載されていたBL漫画『ダイヤルアゲイン』。
現在もWeb、およびcomicoアプリで公開中である。

  • Web版『ダイヤルアゲイン』

comico(コミコ)

作者は『菜の花ボーイズ』で名を馳せたピョン先生。菜の花ボーイズ時代に比べると、かなり絵のテイストが変わった。線がより繊細になり、光沢が増し、特にノアの風貌はただただ『美しい』。その透き通った色白肌&白に近いブロンドの髪が、いつも光を纏って見えるという不思議。

ファンタジー風味があり、主人公が不死身という設定のため、若干流血シーンが含まれている。心抉られるシーンもあるものの、最後の外伝で一気に心が洗われ、素晴らしい読後感を与えてくれる作品。

・・・

さて、ここからが本題。
完全に持論なのだが、この作品、なにかと旧約聖書との関連を匂わせている箇所が多い。
(以降、『ダイヤルアゲイン』のことを『DA』と略記する。)

⒈ノアのモデルは旧約聖書のノアなのか?

DAのノアは透き通った白い肌、光り輝くホワイトの髪に赤目と、アルビノを連想させる風貌で描かれている。その肌の白さゆえに、アレンにあれこれされた末の頬の赤らみもよく映えるものだ。

一方、旧約聖書のノアは…

旧約聖書に登場するノアに関して偽典『エチオピアエノク書』には、「彼の身体は雪のように白く、またばらの花のように赤く、頭髪、(ことに)頭のてっぺんの髪は羊毛のように白く、眼は美しく(エチオピアエノク書106:2)」との記述がある。
(引用元:アルビノ - Wikipedia

…瞳の色に関する詳しい記述はないが、概ねDAのノアの風貌と一致する。
この記述から、旧約聖書のノアもアルビノだったのではないかと囁かれている。

アルビノの赤目…アルビノの中でも特に色素が薄い人は、瞳がほぼ無色であり、血管の色が透けて赤目に見えることがある。

⒉神がノアに与えた救済

DAの最後に綴られる番外編(第45話)には、
・ノアはなぜ生き返ると目の前にいた人に愛される体質になったのか?
という問いに対する答えとなる描写がある。


https://www.comico.jp/detail.nhn?titleNo=24291&articleNo=45 コメント欄より)

この方の考察をさらに掘り下げて、以降持論を混ぜて述べる。

孤児院に入院した頃のデイブも、ホームレス生活を送っていた頃のデイブも、彼の周囲にいたのはいつも『見知らぬ誰か』『初対面の誰か』であったはずだ。
デイブがずっと欲しかったのは、そんな『見知らぬ人』からの優しさ。
ゆえに、『目の前にいた見知らぬ人に愛される』ことこそが、デイブにとっての『幸福』であり、ノアの体質はそれを具現化したものといえる。『ノアを幸せにしてあげてほしい』というデイブの願いは、このような形で実現されたのだ。

最終話まで読んで初めて分かること、それは、『ノアが神ディミトリから救済を受けたのは、ノアが心優しき人であったから』だということ。ノアは神に贔屓されていたわけではなく、ノアが他者に与えた優しさが、時を経てノア自身に返ってきただけだったのだ。

・・・

一方、旧約聖書の『創世記』に登場するノアの方舟物語のあらすじは以下の通り。

主は地上に増えた人々の堕落(墜落)を見て、これを洪水で滅ぼすと「主と共に歩んだ正しい人」であったノア(当時500~600歳)に告げ、ノアに箱舟の建設を命じた。
箱舟はゴフェルの木でつくられ、三階建てで内部に小部屋が多く設けられていた。箱舟の内と外は木のタールで塗られた。ノアは箱舟を完成させると、妻と、三人の息子とそれぞれの妻、そしてすべての動物のつがいを箱舟に乗せた。洪水は40日40夜続き、地上に生きていたものを滅ぼしつくした。

(中略)

ノアは水が引いたことを知り、家族と動物たちと共に箱舟を出た。そこに祭壇を築いて、焼き尽くす献げ物を主に捧げた。主これに対して、ノアとその息子たちを祝福し、ノアとその息子たちと後の子孫たち、そして地上の全ての肉なるものに対し、全ての生きとし生ける物を絶滅させてしまうような大洪水は、決して起こさない事を契約した。神主その契約の証として、空に虹をかけた。
(引用元:ノアの方舟 - Wikipedia

ざっくりまとめてしまえば、『神によって人類は滅ぼされたが、善人ノアとその家族、そして動物達だけは救済を受けた』という話なのである。

『DAのノア』と『旧約聖書のノア』の人物像が、うっすら重なる気がしないだろうか。

⒊ノアの本名『ベンジャミン』の由来

まずは観葉植物としての『ベンジャミン』。

ベンジャミンは、「幸福をもたらす木」としてしられる観葉植物です。また、「永遠の愛」「友情」などポジティブな花言葉をもつことから、開店祝いや結婚祝いのプレゼントによく贈られます。
(引用元:ベンジャミンの花言葉と風水|バロックなど花の種類は? - HORTI 〜ホルティ〜 by GreenSnap

『幸福をもたらす木』。確かにノアらしいなあ…と感嘆。

一方、男の子の名前としての『ベンジャミン』。こちらの由来も調べてみる。

ベンジャミン(Benjamin)は、英語の男子名、姓。ベニヤミンを由来とする。
(引用元:ベンジャミン - Wikipedia

…さて、ここで登場した『ベニヤミン』とは…

ベニヤミン(ヘブライ語: ‫בִּנְיָמִין‬[1]、現代音:ビニヤミン、伝統音:ビニヨーミーン)は、旧約聖書の『創世記』に登場するヤコブの12番目の息子である。
(引用元:ベニヤミン - Wikipedia

…やはり。やはり旧約聖書の創世記つながりであった。ここまでの憶測がじわじわと確信に変わっていく…

後記

ダイヤルアゲインにハマったのは今から約2年前のことであるが、その頃からずっと誰かに話したくてうずうずしていたのがこの話題。
ダイヤルアゲインの最大の魅力は、『悪人は報いを受け、善人は救われる』という優しい世界観だと思っている。そこがまた聖書の世界を思い起こさせる。

30話によると、ノアが8歳になる以前に暮らしていた孤児院は、現在は教会として使われているらしい。
そこもまたキリスト教が意識されているのだろうか?…考察は尽きない。